❅·̩͙53 ページ13
何人もが引きずり込まれた沼に
片足を突っ込んだ気がする。
ショッピングモールに入る前と今では確実に違う心情が悔しい。
『海とか行く？』
陽が徐々に夕の色になっていく時間。
建物から出た渡辺は、まだ用事を終わらせる気はないらしい。
｢行くなら、ついてく｣
『ふは笑 じゃあ行くか』
ん、と1度離れた手が差し出される。
あえて乗せないで歩き出せば、左手の自由が奪われた。
繋ぐ必要があるのか聞きたい。
けど聞いたら壊れてしまいそうで
家族が居なくなって失うものはもうお金ぐらいかと思っていたのに
失いたくないものが増えてしまいそうだった。
甘く甘すぎない空気が渡辺から発されているのに
私はその空気には染まりきれない。
『待って』
手がピクリと反応した。
俯いていた顔を上げれば、渡辺は真っ直ぐ前に視線を送っている。
視線の先は自身のバイク。
陽に照らされて輝く青色に集う、不自然な黒の集団。
『佐久間に一応連絡取ってくんね？
そんでこっから動かないで』
私が携帯を取り出すと同時に手が離れた。
わざとだるそうに歩いて近づいてく彼は、もう別人のよう。
『あんたら何、人のバイクに寄って集まって。気味悪ぃ』
背中を向けていた3人が、同時に振り向いた。
ニタァっと笑う様はさっきの映画に負けないぐらい不気味だった。
文字を打ちたいのに、こういう時に限って
なかなか指が言うことを聞かない。
もたもたしてるうちに渡辺が連れ去られるかもと思うと
写真を送って場所を伝えた方が早い。
｢ 探したんだぜ、しょうたくん ｣
彼を知っている口ぶりだった。
同業者か…？
だけどそれならば普通は頭のふっかを探すはず。
わざわざ渡辺個人を追う理由が分からない。
『誰だよ』
｢ お前の親父が俺らのとこから借りた金、
まだ返ってきてなくてさあ ｣
物騒な匂いがする。
睨みつける渡辺の気迫が薄れた。
『……龍、か？』
｢ そーそー！よく覚えてんじゃん。だったら話早いよな ｣
『ふざけんな、俺はもう縁切ってんだ。
あいつのことでどうこう言われる筋合いはねぇよ』
｢ そうはいかないね。親子の縁は切っても切れねぇ、
母親も居なくなった今、書類上生きてる親族はお前だけ ｣
渡辺のお母さんは居ない…
恐らく父親も彼の傍には。
｢ まあどーしても無理だってんなら
そこの彼女とかで手を打つけど ｣
視線が合う。
悪寒が背筋を走り抜けた。
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カジャ(プロフ) - りんごさん» ご愛読ありがとうございます。なかなか進みませんね…精一杯の勇気を振り絞ってあれだったようです笑 楽しんでいただけているなら嬉しいです。 (5月2日 20時) (
レス) @page36 id: c91b141c55 (このIDを非表示/違反報告)
りんご(プロフ) - お疲れ様です！くっつかへんのか〜ぃの前に、ハグだけか〜ぃ！って海のとこで叫びましたꉂ🤣ワクワクしながら待ってマス！ (5月2日 20時) (レス) @page41 id: ba11269092 (このIDを非表示/違反報告)
りんご(プロフ) - すれ違ったふたりが戻ってきて安心しましたーヽ(；▽；)ノ空気感、好きです♡ (4月29日 22時) (レス) @page36 id: ba11269092 (このIDを非表示/違反報告)
カジャ(プロフ) - りんごさん» 大変申し訳ありません、ご指摘感謝致します。 (4月12日 18時) (レス) id: c91b141c55 (このIDを非表示/違反報告)
りんご(プロフ) - カジャ様、ワクワクしながら拝見してます⋆♡もしかしてですが、45と48が抜けております。 (4月12日 13時) (レス) id: ba11269092 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：カジャ
| 作成日時：2024年4月11日 19時
