❅·̩͙76 ページ36
沈黙に耐えかねたのは
私の方だった。
好きになった方が負けとはよく言ったものだ。
潮騒にかき消されそうなほどに小さな声で
彼の名を呼ぶ。
ちらっとこっちを見た彼は片方の口角を上げて
なんて？と耳を近づけてきた。
｢しょうた、｣
『ちっせぇ声笑』
大きい声で呼べとは言われていない。
『これからずっとそう呼ぶんだぞー』
彼が息を吸い込んだ。
くる、と思っていた歌詞と、1文字目が違っていた。
『♪〜 あなただけ あなたの全て護りたい』
最愛の言葉を言うよ、
有り触れない 魔法のように伝わって
ラブソングだった。
前に聴いた切ないものじゃない、幸せな2人の歌。
私の方を見て歌うのが恥ずかしくて、重なった彼の小指をぱちぱちと弾きながら視線を逸らす。
♪〜 変わらぬ愛の花束 捧ぐよ
サビが終わったようで、歌声が途切れた。
小さく拍手を送ったら
弾いていた小指ごと手の指が全部絡まる。
『違う曲にしてみた、どう？』
歌みたいな甘い顔。
どう、って言われても今私は
あなたとのおかしい距離に耐えるのに必死だよ。
｢良かった、｣
『前のとどっちがいい？』
｢…どっちも良い｣
お願いだからそんなに覗きこまないでほしい。
見に来た海が全く見えなくなってしまう。
『こっち見ろよ』
｢無、無理｣
『なんで』
逆になんで見なくちゃいけないの。
私は渡辺を…じゃなくてしょ、翔太を見に来たわけじゃない。
意地でも見ないんだからな。
顔をわざと逆方向に背けて物理的に視界に入らないようにする。
ふは、と横で彼が笑った。
『必死じゃん』
金属の擦れる音が聞こえた。
上から降りてきた見覚えのあるシルエット。
首の後ろで彼が金具を留める。
携帯で確認すれば、それは銀色の雪だるま。
『出てく必要無くなったよね？』
そろそろと後ろから腰に回ってくる両腕。
私のおへその位置でぎゅっと結ばれて
肩に乗る重み。
私は人生で初めてバックハグをされている。
心臓がうるさすぎて、彼に聞こえてしまうんじゃないかと思った。
『…出てくの？』
子犬みたい。
ルーナが来る前と、一緒。
｢出て、行かない｣
『っし。部屋もこっち戻って来いよ』
｢別に部屋はあのままでも…
せっかく目黒に荷物運び手伝ってもらったし｣
『俺が手伝うから戻ってくんの！』
｢そ、そうですか｣
ではその通りにしましょう。
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カジャ(プロフ) - りんごさん» ご愛読ありがとうございます。なかなか進みませんね…精一杯の勇気を振り絞ってあれだったようです笑 楽しんでいただけているなら嬉しいです。 (5月2日 20時) (
レス) @page36 id: c91b141c55 (このIDを非表示/違反報告)
りんご(プロフ) - お疲れ様です！くっつかへんのか〜ぃの前に、ハグだけか〜ぃ！って海のとこで叫びましたꉂ🤣ワクワクしながら待ってマス！ (5月2日 20時) (レス) @page41 id: ba11269092 (このIDを非表示/違反報告)
りんご(プロフ) - すれ違ったふたりが戻ってきて安心しましたーヽ(；▽；)ノ空気感、好きです♡ (4月29日 22時) (レス) @page36 id: ba11269092 (このIDを非表示/違反報告)
カジャ(プロフ) - りんごさん» 大変申し訳ありません、ご指摘感謝致します。 (4月12日 18時) (レス) id: c91b141c55 (このIDを非表示/違反報告)
りんご(プロフ) - カジャ様、ワクワクしながら拝見してます⋆♡もしかしてですが、45と48が抜けております。 (4月12日 13時) (レス) id: ba11269092 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：カジャ
| 作成日時：2024年4月11日 19時
